moe ikenaga
くつみがきの魔法


ー あとでだいじな話があるから

  5分だけくれる

  ベンチに座ってじゃないとできない話なんだ



そう言われて、わたしはこわくて泣きそうになりました



ー だいじな話

  どうやって切り出したらいいかわからないんだ



そんなふうにもぞもぞ言いながら、おおきなバッグから、

ちいさな白いバッグをとりだしました



そうして白いバッグのなかから、なにやらスプレーと布がでてきました



くつを脱いで、といって、わたしのくつをうでのなかにだきかかえ、

自分のくつを脱いで、寒いから、と、わたしにはかせました



そうして、わたしの、土で汚れた黒いくつを、やさしくやさしく、ていねいにふいてくれました



ー「だいじな話」って、これ?



わたしはすこしおこりました



それから、



ありがとう



って、そちらを見ないままに、

ぼそっといいました



まだすこしだけ、おこっていました



だけどすぐにおこっていたことも、わすれてしまった







オリオン座のことを、

北斗七星

とまちがえて自信満々に言い放った、

星のきれいな、夜のこと

















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